2012年8月6日月曜日

分尾キャンプ事前準備

7月21日と8月4日から6日に,豊岡市日高町羽尻の分尾キャンプ場の整備を行いました。
昨年秋の台風,その後の豪雨によって,昨年夏に作った丸木橋は流され,登山道は倒木だらけでした。急斜面の道は,地滑りで崩落しており,とても荷物をもって登れる状態ではありません。

森林組合の北垣君が送ってくれた写真です。

 左斜面に地滑りで崩落した道があります。


上の箇所をシャベルとツルハシで整備しました。 


倒木は数か所で道をふさいでいました。


矢谷慈國先生,3,4回生ゼミ(杉崎,澤井,藤田,西崎,長瀬)と,井川さん親子と共に「登山道を整備しながら山に登り」,北垣君と杉を3本切り倒して,新たな丸木橋を建設しました。
2回にわたり,述べ3日間の作業で,登山道の倒木を撤去し,崩落した急斜面には新たな道をつけました。

 急斜面には2か所,20mのロープを下げました。

 
 分尾倶楽部(堀さんたち)の山小屋が見えます。その手前に今回建設した丸木橋が小さく見えます。

 ミニキャンプ


大変きつい仕事を2日間こなして,最後に滝つぼで水浴び

さて,8月9日から13日の本番キャンプでも,怪我もなく,楽しめることを期待しています。
とくに夜間の流星群が楽しみですね。


2012年7月9日月曜日

2012年6月25日月曜日

学生流むらづくりプロジェクト「木の家」の活動

学生流むらづくりプロジェクト「木の家」


 2012年6月22日から23日にかけて,神戸大学,学生流むらづくりプロジェクト「木の家」のメンバー18名が,兵庫県多可郡多可町観音寺集落でログハウス建設作業を実施しました。この日は,私も観音寺の皆さんと神戸大学経済学研究科の支援を得て,新たなむらづくりへの取り組みを相談するために観音寺へ伺いました。
 22日14時ごろから「木の家」のメンバーが,ログハウスの部材を磨き上げ,ペンキ塗装の作業を始めました。

北播磨森林組合,ログハウスの西村さん,牧さん,観音寺の皆さんのご助力を得てすでにログハウスの部材加工は完了しています。

塗装の前に部材の表面をピーラーや金たわし,グラインダーで磨き上げます。



 2種類の木材塗料を「内面」「外面」に分けて塗ります。
塗装ができた部材を乾燥させています。

調理班が用意したちらし寿司,吸い物,サラダ,豚シャブが夕食メニューです。
観音寺集落の役員の皆さんも千円の会費をもって参加してくださりました。

ちらし寿司はなかなかの味です。ログハウス建設を通じて,料理も上達しています。


 「木の家」の計画では,9月に棟上げ,完成式典を行います。
この活動に参加を希望の方はぜひご連絡ください。これからさらに楽しい,本物の体験ができます。神戸大学生たちと一緒に新しい時代を切り開く貴重なチャンスです。
 
 「木の家」の活動と中山間地域のむらづくり支援への寄付金をお願いします。学生たちは独自に兵庫県から補助金(25万円)を頂きましたが,建設資金,神戸市内からの往復交通費で厳しい経済状況にあります。資金面でのサポートをお願いできます方にはぜひご連絡をお願い申し上げます。
 藤岡 秀英(fujioka@econ.kobe-u.ac.jp )へご連絡を頂ければ感謝いたします。

むらづくり調査研究と政策提言に向けて

この日は,神戸大学経済学研究科から「多可町とのむらづくり連携事業」のための予算を提供してくれたこと,今後,多可町の小規模集落に呼びかけて,調査研究とともに政策提言へと歩を進めて行くことを観音寺の皆さん,木の家の学生諸君に伝えました。

 具体には,多可町の小規模集落の役員さんに参集いただき,現状と課題を整理するところから始めます。
 
 それぞれの集落の現状は,同じような地理的条件,高齢化と人口減少の問題で共有する課題がありますが,具体的にはまったく異なった状況にあります。全国の限界集落も同じく,同じ問題を抱えつつ,現状は異なるのです。
 第1には,こうした認識を共有するところから始めなければなりません。
 第2に,それぞれの集落が積み重ねてきた「むらづくり」の成果を振り返る必要があります。都市住民との交流事業は,3つの集落ともに大変な努力をしてきました。さて,それがどのような意味をもっているのか,どのような成果として誇ることができるのか,そこから次にどのような展開が可能なのか,このままで良いのか,という反省と次のステージへの課題を考える必要があると思います。
 第3に,各集落で共通する困難とは何かを整理します。「次世代の確保」,さらに具体的には「孫世代」の確保は,どの集落にとっても10年以内に大きな悩みとなります。いや,すでに孫世代の人数を見れば,どの集落も危機的な状況にあることは自覚されているはずです。

 以上の3つの論点を整理しながら,一緒に取り組むことができる政策実践は何かを探らねばなりません。

 観音寺では,都市へ移住した家族,親族から故郷に関心を抱いてくれる人を招いての「懇談会」を提案しています。これは「孫世代」の啓発とUターン促進のための呼びかけにつなげる方向で準備してはどうかと思います。
 同じ試みを他の集落でも実施するかどうかはまだわかりません。
 また,岩座神の「棚田オーナー制度」,山寄上の工場誘致,観音寺の菜種油,コシヒカリの事業などの継続性と発展の可能性についても意見を交換することを考えています。それぞれの思惑は異なっていますが,内実について意見を交換すれば,村おこし事業の課題も見えてくるのではないかと考えています。

 そして,参加者には,一緒に連携できることは何かを考えていただくこと,他の集落にも呼びかけて協力すべきことは何かを議論できればと考えています。たとえば「消防団」の現在の制度はいつまで継続できるのでしょうか。これはたいへん大事な問題です。
 

 以上,雑駁ではありますが,これからの調査研究と政策提言についての方向性を書いてみました。
 ぜひご意見をお寄せください。
 

2012年5月29日火曜日

多可町八千代区 田植え実習

2012年5月26日から27日,恒例の田植え実習を行いました。
 26日午後2時から,自家製ハム・ベーコン,山菜取り(タケノコ,わらび,こごみ,ユキノシタ,セリなど)の採集と調理実習,鶏さばきと調理,黒田庄牛のバーベキューを楽しみました。
 自家製ハム・ベーコンは,10日前から仕込みを行い,わが家の次男辰徳が朝から炭をたいて燻製を始めていました。中学2年になればちゃんと火を管理して7時間の作業にも耐えることができますが,なかなかよく頑張りました。立派,立派。
 ゼミ生23名は14時過ぎに到着。卒業生2名がバイクで到着。井川さん一家は車で来られました。
 宮崎敬三さんが田植え機を使って,最新型田植え機でガイドラインを植えてくださいました。宮崎さんには,イチゴ狩り体験,玉ねぎ,さやえんどうを収穫させていただき,すばらしい食材は,夜のパーティーに頂きました。
 夜のパーティーには,東野としひろさんから黒田庄ビーフを,青位養鶏場からは鶏4羽とビールを1ケースを頂き,お隣のおばあちゃんからもたくさんのソーセージやバーベキューコンロまで提供していただきました。4月に赤坂集落に転入されたばかりの沖野さんからもワインとお酒を頂きました。そして,毎年参加してくださっている井川家の皆さんにもたくさんのフランスパン,食パンを頂き,なんとも贅沢な田植え実習の前夜祭となりました。
 
 


 
イチゴ狩り
露地物のイチゴは甘い,初めて食べる学生もいたようです。

 さやえんどう

山菜採り
 わらびの宝庫

 タケノコ(5月末でも採れるのです)

燻製 
 自家製ハムとベーコンの完成です。
ベーコンには国産の良い豚肉だけを使います。塩,こしょうをはじめとする香辛料に漬けて10日余り,前日に塩抜き,乾燥をして,当日の朝,10時から桜のチップで燻製しました。本物のハム,ベーコンを味わっていただきました。


 いよいよ田植え
なぜ,経済学部の大学生が田植え,稲刈り,脱穀といった 農作業と,鶏さばきや山菜採り,夏にはキャンプを体験するのか。それは,まず具体的な生産を体験すること,自然の生命とのつながりを体感すること,自分も自然の一部であるとの実感をえるためです。そして,共同作業を進める中で互いの理解と信頼関係を育むことが目的です。
 自宅に30名近い学生を宿泊させて,酒まで飲ませる,田植えやら鶏さばきを体験させるのは,たいへんです。家族,わけて家内の協力があってのことです。そして,この8年目になる実習を応援してくださる地域の方々に心から感謝を申し上げます。
 学生諸君にも,その辺ことを分かってくれるとよいのですが,「自分だけ楽しむこと」に終わっていないかが問題です。はたして自らの「視界」を広げ,深めるきかっけにつながっているのでしょうか。参加者のみなさんにはぜひよく考えていただきたいと思います。

田んぼの隣のおばあさんたちとお孫さんも応援してくれます




 田植えから,稲刈り,脱穀へと続く一連の農作業,夏の分尾キャンプは,ゼミの基本的な活動です。更に,希望者とフィリピンなど東南アジアへの調査旅行を続けています。また,日本国内でのまちづくり,むらづくりの調査と具体的な活動にも参加しています。
 学生が自ら積極的に発案し,計画し,実践することが大切なのです。私は,そのきっかけを提供しているだけですが,今年はどんな挑戦をしてくれるかが楽しみです。

なお, まちづくり,むらづくりについては:藤岡 秀英著『社会政策のための経済社会学』高菅出版,2012年3月,第8章を読んでください。
 

2012年4月15日日曜日

2012年多可町「菜の花祭」へ応援参加(加美区門村)

2012年4月14日(土) 神戸大学「学生流むらづくりプロジェクト 木の家」のメンバー19名と藤岡ゼミから2名が,多可町加美区観音寺集落へ「菜の花祭」の準備に参加しました。
14日(土),私は,菜の花と野草(のびる)を採って,御浸しと酢味噌和えを作りました。18時から老人会の皆さんとの夕食会を楽しみ,学生諸君はお好み焼きを焼いて,老人会の皆さんが作ってくださった「炊き込みごはん」のおにぎり,菜の花の御浸しなどで楽しみました。
20時30分,学生諸君を「エコミール加美」のお風呂へ送迎した際,見事な夜桜を見ることができました。



4月15日(日)「菜の花祭」当日,午前8時に観音寺集落から,門村へ移動します。
神戸大学の学生諸君と一緒に,鹿肉のロースト,時雨煮,米粉パンを来場者に振る舞いました。
鹿肉の料理がとても好評です。
菜種油の「菜っちゃん」は,「完売」。
観音寺の有機・無農薬,コシヒカリの米粉も4袋,売れたとのことです。


鹿のもも肉を赤ワインに漬けています。




津軽三味線の演奏は素晴らしいものでした。

門村の菜種畑

神戸大学のジャグリング部「ジャグ六」


兵庫県多可町加美区の観音寺,箸谷,門村,杉原の4集落は,休耕田を使った
菜種畑の事業を積み重ねています。
「むらづくり」のひとつの挑戦です。
春には「菜の花祭」4月
秋には「菜種祭」9月


特産物としての菜種油「菜っちゃん」は,1本800円です。無農薬・有機栽培の菜種だけを使った油です。この日は,この菜種油だけで作った,「菜の花の天ぷら」が絶品。少々ぜいたくすぎる食べ物です。

「学生流むらづくりプロジェクト 木の家」のメンバーもとてもよく頑張っています。5月25日から,いよいよログハウスの組み立てに入るとのことです。ぜひ応援してください。

すべての写真を見る

2012年3月16日金曜日

ハノイで考えていたこと

2012年3月9日~12日 ベトナム,ハノイでNGOの国際研究会議に参加していました。

 アジアのNGOが一堂に会してCSO(市民社会会議)として,FAO(国際連合食糧農業機関)への政策提言を議論することが目的です。私はこれに初めて参加したのですが,アジア農村地域での社会問題が包括的に議論されていました。
 主なテーマは,「産業投資による農地の収奪(Investments and Land grabbing)」,「食料と水の安全(Food and Water Security)」,「女性とジェンダー問題について(Women and Gender Concerns)」,「気候変動による農作物への影響(Food Resiliency and Climate Change)」などです。
 私の研究としては,農村から都市への人口移動の問題,農業の近代化にともなう変化について,意見を交換することが目的であったのですが,現実は私の想像をはるかに超えた次元にありました。



産業資本投資と農地収奪
 前回のフィリピンについての記述では,近い将来には農村部での近代化が進むこと,外資系の投資によって農民が土地を追われ,都市部への人口移動が加速するだろう…と書きましたが,事態はすでに始まっていました。
 フィリピンだけではなく,インドネシアでも,「ある朝,突然,農地が外資系企業に占拠されて,農民は知らないうちに土地から排除されている,そんな事態がすでに起こっているのです」との発言が繰り返されていました。これがLand Grabbing 農地の収奪です。
 「小作農民は,農地を追われて都市へと流れる,その都市でも仕事がなければ,別の地域へと流れ流れ,そして,海外の建設現場へも流れていく,まさに浮浪民となっていくのです。」
「そもそもインドネシアやフィリピンの周辺地域では,まだ戸籍もなく,教育などとはまったく無縁であり,少数民族の言語しか話すことはできず,もちろん読み書きはできない。そのような人びとに耕作権を主張することはできず,農地を追われた人びとは『暴徒』となるか,浮浪民となるしかない,これが現実です」との説明を聞くと,返す言葉もありません。

気候変動と食糧確保の問題 
 今回の議論では,分科会にわかれての議論であったため,私は農地収奪問題の舞台しか参加できませんでしたが,他のテーマについては全体会での報告を聞くことができました。
 気候変動による農作物への影響は,国,地域によってまちまちです。ある地域では雨が降らない,干ばつが問題となり,他の地域,たとえばベトナムでは海水位の上昇によって農地が水没する問題がすでに観察され始めているとの報告がありました。集中豪雨による水害,干ばつ,海水面の上昇など,地域によって気象変動の影響は当然異なります。それが具体的にどのくらいの農作物に影響をもたらしているのか,収穫の減少については,この会議の舞台では紹介されませんでした。しかし,モンゴルでは干ばつが問題となり,ベトナムでは海水面の上昇などがすでに確認されていると言います。気象変動については,政策的対応が難しいことは誰にでもわかりますが,NGOは国際金融機関による資金援助によって,当該地域の食糧確保を提言しています。フィリピンやインドネシアでは,米を輸入に依存しているからです。

 「女性の解放」とのテーマについては,今さら?と思ったことですが,途上国の女性がいかに過酷な労働と家事,育児を担い,家庭内での暴力にも耐えているか,そこには「人権」という発想さえもなく,悲惨な実情であるとの報告がありました。日本国内での問題とはレベルがまったく違います。近代社会とはとても思えない実態があるわけです。

          アグリコード(NGO)の代表とアジアドラ(ASIADHRRA)の夕食会

2012年3月2日金曜日

2012年フィリピン調査旅行

2012年2月20日から28日にかけてフィリピンへの調査旅行を実施しました。
参加者は,追手門学院大名誉教授の矢谷先生,大学院の山岡君,学部学生12名です。
今回の調査旅行も,フィリピンのコアNGOのフィルドラ(PhilDHRRA)の協力を仰ぎ,イリガ市のファティマセンターに5日間,マニラ市とケソン市で孤児たちの里親ケアプログラムを20年近く実践しているNGOノルフィル(NORFIL),セント・アナ教会地区のまちづくりを担うNGOなどを訪問しました。
フィルドラ・パートナーシップセンターにて

レガスピ空港,マヨン火山を背景に

2月21日,マニラからビコール地方,レガスピ市へ移動しました。この地域では毎年,火山噴火,台風による被害が絶えません。


昨年9月の台風によって,橋が倒壊し,この地域では2千人以上が犠牲になっていました。

ファティマセンターの創始者,シスター・エタ
日本人の篤志家による支援に感謝されています。

ファティマセンター
  Acronym: FACE
Type of Organization: NGO
Head of the Organization: Sr. Felicitas de Lima
Designation: Executive Director
Address: San Agustin, Iriga City
TeleFax No.: (63)(54)29- 92289

ファティマセンターが運営する山村の部落小学校

日本の支援によって山村地域の子どもたちへの教育支援,地域開発を担うNGO カザフィ(CASAFI)訪問
 Acronym: CASAFI
Type of Organization: NGO
Head of the Organization: Fr. Nelson Tria
Designation: Executive Director
Address: Liboton St., Naga City
Telephone No.:
(63)(54) 473-9550 / 473-4174
TeleFax No.: (63)(54) 473-4175
ファティマセンターに滞在中にカザフィNGOを訪問し,貧困地域の子どもたちへの教育支援,コミュニティ開発事業についての説明を受けました。この事業には日本からの支援金が大部分を占めています。繰り返し日本への感謝の言葉を頂きました。



ノルフィルの里親さんと孤児
私たちは6軒のお宅を訪問し,里親となる経緯や苦労についてお話を聞きました。
Acronym: NORFIL
Type of Organization: NGO
Head of the Organization: Angela Maria Pangan
Designation: Executive Director
Address: 16 Mother Ignacia cor. Roces Avenue, Quezon, City
Telephone No: (63)(2) 372-3577 to 9
Fax Number:
(63)(2) 373-2169
Email Address: norfil@philonline.com.ph


 まず,ファティマセンターでは,学生の英語によるコミュニケーション能力を高めること,フィリピンの孤児たちの生い立ちや孤児院の在り方について考え,議論することを目的としました。
 マニラ市とケソン市では,里親ケアプログラムに参加している6軒の家を訪問し,学生は2人ペアとなって里親制度について丁寧なヒアリングにつとめました。
 今回の調査旅行では3回に渡ってNGOスタッフとのディベートを行いました。とかく英語での会話力が乏しいと批判されますが,フィリピンの貧困問題についての原因と対策をテーマに準備したうえで討論会を試みました。


フィリピンの貧困問題
 フィリピンの貧困問題への支援はドイツ,カナダを筆頭に多くの先進諸国の人びとによって取り組まれています。ドイツだけで1億ユーロを超える支援が行われ,日本からも3000万ユーロを超えています。
 それにもかかわらず,子どもの貧困,虐待,孤児の問題は後を絶ちません。一般的には,いまだに巨大地主(約500家族)が国土の大半を所有しており,農地改革が進んでいないからだと理解されています。
 マニラを中心にここ数年の近代化・産業化の進展は目覚ましいものです。超高層のマンション,オフィスビルが立ち並び,数年前に道路脇にひしめいていたバラックは,マニラの中心街からは一掃されています。しかし,マニラ,ケソンの周辺部には今もスラムが残っています。中心部から排除された人々は,ダンプサイト(ごみ処理場)周辺に集まり,今も最悪の生活環境のなかで,ごみの分別,資源回収に従事しています。
 ルソン島南部,ビコール地方も貧困地域です。世界中のNGOによる支援は,マニラ,ケソンの貧困地区とビコール地方の農村に向けられています。
大地主が農民を収奪し,マニラ市やケソン市へと貧しい若者が移動する構造は,この10年余りまったく変わっていません。経済社会の構造が変わらない限り,フィリピンの貧困問題,子どものの社会問題に解消の見通しは立たないことがわかります。

農地改革とNGOへの支援
 では,今後どのような経済社会の構造変化が期待できるのでしょうか。
 NGOはほとんどが「農地改革」の推進こそが最大の課題であり,産業社会の発展からは,外資系企業からの寄付金に期待を寄せています。CSR(Corporate Social Resposibility)に参加する企業を増やすことです。これはNGOへの寄付金を課税控除できる制度であり,日本企業ではトヨタなど多くの企業が協力しているとのことでした。
 
子育て支援(フィリピンの児童手当)
 また,近年マニラ政府が取り組んでいる子育て支援(児童手当)としてCCT(Conditional Cash Transfer)があります。この制度はタガル語の省略で4Ps(Pantawid Pamiliya Philippine Program)とも呼ばれています。
 子ども1人あたり月額300ペソ(600円)が3人まで支給され,母親が妊娠している場合には500ペソ(1000円)が追加され,最高1400ペソ(2800円)が現金で支給されます。ただし,子どもたちが小学校,高等学校に通っていることを証明する書類と妊婦は健康診断を定期的に受けているとの証明が支給条件です。財源の2分の1は世界銀行からの融資による政府事業です。現政権(ノイノイ・アキノ)の間は継続が公約されていますが,財源問題からいつまで継続可能かは定かではありません。

農業の近代化による浮浪民の増大が予想されます
 農村を幾度も訪問する中で感じていた違和感があります。それは貧困地域の農村でも自動車やバイクの普及が目覚ましいこと,その反対に農業機械は使われていません。トラクターや田植え機,稲刈り機はなく,脱穀もすべて手作業です。モータリゼーションが急速に進んでいるのに,耕作機械がありません。
 圃場整備もほとんどなされていません。稲作には用水路が必要ですが,水田に畔は作られていても,用水路はできていないのです。稲作ができるかどうかは,天候まかせであると聞きました。もとより湿地帯をそのまま水田に仕立てているだけです。
コメの値段は,日本の10分の1以下,それほど人件費が安いわけです。人口増加が著しく,労働力に不足がないため,農業の機械化が進まないと考えられます。
 しかし,これからさらにマニラ市を中心に近代化・産業化が進むと,農村部から都市部への人口移動はさらに加速し,若者はみな都市へと流出するでしょう。農業の機械化の必要性が必ず高まると思います。そのときに,大地主が外国資本に農地を提供し,中国や韓国が機械化によって農業の効率性を高めようとすれば,現代版のエンクロージャーが実施されるかもしれません。多くの農民は,「農地改革」の実現を待たずして,農地から追放されることになるのでは?大地主が農地を外資に貸し付ける動きはすでに始まっています。
 これがどのくらいの速度で展開するかによって,経済社会の構造変動のありさまが左右されることになると思います。農地を追われる農民が抗議運動をするか,それとも農村には「農業労働者」が残され,大部分の人口は都市部へと移住していき,生産性の低い山地に,極端に貧しい人びとが取り残され続けることが想像されます。
 はたして,NGOはといえば,1980年代から活動を続けてきた第1世代が高齢期を迎え,後継者問題を抱えているところが少なくありません。かつてのように農民を組織して「農地改革」を精力的に勧める人材が不足しています。優秀な若者は,大学や専門学校を卒業してから,海外へと出稼ぎに行くか,外資系企業に勤めることがステータスになっています。NGOに身を投じて低い所得に甘んじる若者は少なくなりました。
 おそらくこの傾向は東南アジアの多くの地域に当てはまると思います。
私は3月9日からベトナムへ行き,アジアのNGO団体の活動報告研究会にて,これらの点を確かめてみたいと考えています。